北條民雄全集(上)の最初に書かれている「いのちの初夜」を読みました。北條民雄23歳の時の作品。川端康成を介して世に出た作品。
50ページほどの短編・・・元々は「最初の一夜」だったのを川端康成が変えたもの。何故改題をしたのか聞いてみたいものです。なにかロマンチックな題名だけど、中身は違います。今は川端康成も故人ですな。。自殺ではなかったという説もあるようですが。
北條民雄も本名ではなく、今もって非公開ということになってます。
ハンセン病に罹り、幾度も自殺を企てたが死に切れず、異界となっていた隔離病院の中で結核にも罹り、僅か24歳で亡くなった北條民雄の命の叫びのようでした。
主人公の尾田は北條自身なのでしょう。この文庫本の47ページに、病室の付添い人が尾田に向かって語る言葉があります。・・「人間ではありませんよ。生命です。生命そのもの、いのち!そのものなんです。僕の言うこと、解ってくれますか、尾田さん。あの人たちの『人間』はもう死んで亡びてしまったんです。ただ、生命だけがびくびくと生きているのです。」「なんという根強さでしょう。」。。。他は、まだ読んでないけど、僅かな人生の中の・その僅か一年半あまりの時間の中で至宝の文学を書き続けた原動力は、やっぱり「生きたい。なんとしても生きたい。」という想いだったのかなと・・。ちょっとというか、かなり心に負担を強いる作品だけど、今の教科書にも載せていい作品だと思いましたね。
昭和16年には特効薬も出来ていたのに、つい最近までハンセン病については、政府も私たちも偏見と無知から差別意識があったのではないか思うと、本当に恥ずかしい気がします。
参考までに。
無知や迷信から来る偏見というのは、今もこの世に満ち満ちていて、いつまで経っても進歩しない人間という存在は、ほんとうに地球の癌と思える。
その癌が作ったゴルフ場は、まさに地球の皮膚癌というわけだ。・・・どうしようもない存在が、人間という存在なのかも知れない。
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こちらも参考までに。